近年の科学技術の発展に伴って重篤な心疾患患者の救命のために各種人工心臓が研究開発されている。しかし、小児を対象とした人工心臓は世界における体外設置型補助人工心臓の年間症例数が約 160 例と少ないため経済効果が得られない希少疾病用医療機器(オーファンデバイス)と位置づけられ、企業化が困難な医療機器として研究開発が滞っている。しかし、未来ある小児を救命する意義は大きく、経済効果を考慮することなく救命機器の研究開発が成されるべきである。そこで、企業システムに依らない特定非営利活動法人オーファンデバイス研究開発を立ち上げ、小児用補助人工心臓に代表される希少疾病用医療機器の研究開発を行う。当該法人に研究開発に必要な技術を蓄積し、実用化を促進し希少疾病患者の救命を目指す。
 本会は日本人工臓器学会、日本定常流ポンプ研究会での活動を通じてその必要性が議論されてきたもので、All JAPAN の研究者等の技術、熱意を集約するものでもある。今後は上記研究者たちとの共同研究や指導のもとに希少疾病用医療機器の実現に必要な科学技術、ノウハウの集約、デバイスの研究開発を進める。
 現在の経済システムでは技術開発および社会への還元としてベンチャー企業の起業が勧められているが、企業はその存続のために利益を必ず生じさせるための経済的規約に則って活動するものであり、希少疾病用医療機器(特に治療機器)のように利益率が低いものは商品として適合しない。同様にベンチャーキャピタルからの資金供与も期待できない。そのために非営利活動法人として社会より広くサポートを募り、活動法人の上げる利益+社会からのサポートにより希少疾病用医療機器の実現を図るものである。これにより、現在の経済システムでは救うことができない患者、特に未来ある小児患者の救命を行うことは人類および高齢化社会にとっても大きな貢献となるとともに、新しい医療機器開発の仕組みの確立に繋がる。